東京高等裁判所 昭和49年(く)179号 決定 1974年10月24日
少年 D・K(昭三二・六・一七生)
Y・H (昭三三・一・一六生)
主文
本件各抗告を棄却する。
理由
少年D・Kの抗告申立の要旨は、同少年は、少年鑑別所に収容されたのは初めてであり、同所内において自分の過去の非行や生活態度を十分反省し、今後は真面目に生活する自信ができたのに、中等少年院に送致されるのは納得できず、原決定の処分は重すぎて不当であるというものであり、少年Y・Hの抗告申立の要旨は、原決定認定の犯罪事実(2)の窃盗は、共犯者とされている他の三名が同少年の知らない間に犯したものであるから、同少年が右犯罪事実(1)の恐喝を行なつただけで中等少年院に送致されるのは納得できず、原決定の処分は不当に重いというにある。
よつて、少年両名の各保護事件記録、少年調査記録を調査して検討するに、まず少年D・Kは、横浜家庭裁判所小田原支部において、昭和四七年七月三一日窃盗、恐喝、同未遂、暴行保護事件により審判不開始決定を受け、同四九年二月一五日道路交通法違反(無資格運転)、窃盗保護事件により横浜保護観察所の保護観察に付せられ、保護観察中であるにもかかわらず、職を転々と変えながら不良交友、夜遊び、外泊等を続け、オートバイの無資格運転をくり返えしていたが、同四九年八月一二日から本件窃盗の共犯者の少年らとともに家出し、その中の一人が窃取した自動車を使用して遊び廻つているうち、金銭に窮して本件非行を重ねるにいたつたものであつて、中学校在学中から見られた非行性は次第に進行し、相当高度に達していることが認められる。次に、少年Y・Hについてみると、同少年が右D・Kら少年三名と共謀のうえ、自動車に同乗して同少年に対する原決定認定の犯罪事実(2)の日時場所にいたり、他の三名が同認定の衣類等を窃取し、その間同少年は車中で見張りをしていた事実は明白であるのみならず、同少年は、中学校在学中から再三非行や家出をくり返えし、横浜家庭裁判所小田原支部において、昭和四七年五月二九日道路交通法違反(無資格運転)保護事件により、同年六月五日窃盗保護事件により、いずれも審判不開始決定を受け、同年一一月八日窃盗保護事件により横浜保護観察所の保護観察に付せられ、さらに同四九年七月一九日窃盗、道路交通法違反(無資格運転)保護事件により不処分決定を受けたにもかかわらず、同年八月二日に家出し、少年D・Kらとともに遊び廻つているうち、金銭に窮して本件非行をくり返えすにいたつたものであつて、その非行性、反社会性はすでに固定化しつつあるものと認められる。そして、少年両名につき、以上の諸点一のほか本件各非行の罪質、態様、各少年の性向、生活歴、さらにいずれもその保護者において少年らの気ままな生活を十分規制することができず、その保護能力に期待することができない状態にあることなど、諸般の情状を考え合わせると、各原決定が処分の理由として説示するとおり、少年両名の健全な育成を期するためには、この際少年両名を施設に収容し、規律ある生活訓練と職業指導を施すのが相当であると認められる。各抗告申立の理由としている点を十分に考慮しても、少年両名に対する各原決定の処分が不当に重いものとは考えられず、本件各抗告はいずれも理由がない。
よつて、少年法三三条一項、少年審判規則五〇条により、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 上野敏 裁判官 綿引紳郎 千葉裕)